「肝胆膵消化器病学」は横浜市立大学附属病院の消化器内科部門です

肝臓癌(肝細胞癌、転移性肝癌)


肝細胞癌、転移性肝癌とは

肝細胞癌はB型・C型肝炎ウイルスによるものがほとんどですが、近年はウイルスが原因でない肝細胞癌(NASHやアルコールが原因)も増加しています。肝細胞癌がある場合、肝機能の低下を伴っていることも多く、予後を決めるのは癌だけでなく、肝機能も重要となります。そのため治療法の選択の際には、癌の大きさや個数だけでなく、肝機能を考慮することが必要となります。さらに、肝細胞癌は、治療後も再発する頻度が高く、外科手術による肝切除後の5年再発率は約7割とされています。このため再発時の治療も念頭に置き、肝機能を温存することを考慮することが必要で、他の癌よりも体への負担が少ない治療が重要とされます。 転移性肝癌は、肝臓以外に発生した癌が肝臓へ転移したものを言います。癌は発生した臓器に関係なく、肝臓へ転移する可能性があります。転移性肝癌は予後を決めるものとなり得るため、転移性肝癌に対する積極的な治療も必要となります。高齢化に伴い、各種の癌が増加しており、転移性肝癌も増加しています。転移性肝癌に対する体への負担が少ない治療も重要となってきているのです。

RFAとは

肝臓癌(肝細胞癌、転移性肝癌)の体への負担が少ない治療としては、経皮的局所療法、経カテーテル動脈塞栓術(TAE)や化学療法、放射線療法等があります。 このなかで、安全性と効果、肝機能への影響、再治療の容易さ等の点から総合して考えると、経皮的局所療法が勧められます。この経皮的局所療法として、最近では経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation ; RFA)が主流となっています。腫瘍の中に直径1.5mmの電極針を挿入し、電極周囲を450kHzの高周波(ラジオ派)により誘電加熱し、癌を凝固壊死させる治療法です。RFAでは、1回の焼灼で径約2~3cmまでの範囲を予想どおりに壊死させることができます。

当グループでのRFAの適応

RFAには一般的な適応基準がありますが、当グループでは各症例において臨機応変に対応しています。適応基準外の症例でもRFAによる治療が可能である、または、RFAしか有効な治療法がないと判断した場合には、患者さんに十分な説明を行なった上で、ラジオ波を行なう場合があります。また、TAEなどとの組み合わせ治療や、人工胸水法や人工腹水法を導入し、治療の工夫も行なっております。

RFAの偶発症

RFAは肝臓癌に対する体への負担が少ない治療とされています。しかし、癌に対する治療である以上、偶発症は避けられないのが現状です。ひとたび偶発症を引き起こすと、深刻な後遺症を残す危険や、場合によっては命を落とす危険もあります。また、偶発症の治療のために特別な処置や手術が必要となることや、入院期間の延長や医療費の負担が増えることが余儀なくされる場合もあります。 主な偶発症には以下のものが上げられます。

  • 出血:腹腔内の出血、胸腔内の出血、胆道からの出血、皮下の血腫
  • 肝膿瘍:癌ではないところの壊死部に胆管からの細菌感染が起こる
  • 消化管穿孔・穿通:消化管への直接穿刺、消化管への通電・熱伝導により発生する
  • 播種:針を挿入した経路や腹膜に癌細胞が付着し、新たに癌が発生する

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