「肝胆膵消化器病学」は横浜市立大学附属病院の消化器内科部門です

Hepatology誌に掲載

2022-01-06

大学院生(現新百合ヶ丘総合病院)川村允力医師、新百合ヶ丘総合病院今城健人医師らの論文がHepatology誌(Impact factor=17.4)に掲載されました。

Influence of liver stiffness heterogeneity on staging fibrosis in patients with nonalcoholic fatty liver disease.
Kawamura N, Imajo K, Kalutkiewicz KJ, Nagai K, Iwaki M, Kobayashi T, Nogami A, Honda Y, Kessoku T, Ogawa Y, Higurashi T, Hosono K, Takahashi H, Yoneda M, Saito S, Aishima S, Toyoda H, Hayashi H, Sumida Y, Ehman RL, Nakajima A.
Hepatology. 2021 Dec 24. doi: 10.1002/hep.32302. Online ahead of print.PMID: 34951726

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34951726/

川村医師のコメント
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)では、肝臓の線維化進展が肝硬変への移行や肝細胞癌の発生のみならず、心血管イベントの発生などに強く関与するといわれております。そのため、正しく肝線維化を診断することは、NAFLD患者さんへの治療介入を行っていく上で非常に重要と考えられております。従来は、肝線維化の診断には肝生検による病理学的評価が不可欠でしたが、侵襲性やコストの問題から、血液検査や画像検査(MR Elastographyなど)を用いた非侵襲的診断法が開発されてきました。しかし、実地臨床では肝生検による病理学的診断と非侵襲的診断が一致しない(例えば生検では軽度線維化との診断であるのに、MR Elastographyでは高い肝硬度を示すなど)ことがしばしば経験されます。我々はその原因について、肝硬度の不均一性(heterogeneity)に起因する生検のsampling errorであるという仮説をMR Elastographyをもとに検討致しました。そして、病理学的診断と不一致が生じる症例の多くは、不均一な肝硬度を有するheterogeneous typeであり、他の非侵襲的診断法の結果も加味し判断すると、生検結果よりもMR Elastographyによる線維化診断の方が正しい可能性が示唆されました。これらを、肝臓病学の一流紙であるHepatology誌(Impact factor=17.4)に報告致しました。本報告により、これまで線維化診断の絶対的基準であった肝生検が、heterogeneous typeにおいては過大評価もしくは過小評価をもたらし得ることが示され、あらためて肝生検をゴールドスタンダードとすることを再考慮する一端となることを期待しております。

今回、横浜市立大学肝胆膵消化器病学をはじめ、多施設の諸先生方に多くのご協力を頂き、このような研究成果を残すことができました。また、中島淳教授のご尽力で、MR Elastographyでご高名なMayo clinicのEhman教授らにもご指導頂けたことは大変貴重な経験です。大学院2年生で研究者/医療者としてまだまだ駆け出しの時分に、このような素晴らしい研究機会を与え、ご指導頂きました中島淳教授、Mentorの今城健人先生、また、横浜市立大学肝胆膵消化器学ならびに多施設の諸先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。

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